植民地の記憶の場所にみんなで行ってみよう会

日韓学生が一緒に植民地時代の記憶の場所をめぐる活動記録。

第1回活動報告~

 

今月の初め、ソウルで日本の植民地時代を考える「みんなで行ってみよう会」(略してみん会)というものを立ち上げました。

 
 
 
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【韓国の歴史に触れてみたい日本人学生、일제시대역사를 일본사람이 어떻게 생각하는지 궁금한 한국 학생 募集!모집! 】 今回、後輩と一緒に日本人はなかなか1人で行けない植民地支配の記憶の場所に足を運ぼうという『みんなで行ってみよう会』を作ることになりました! 日本人だけではなく、日本語可能な韓国人の方も入会可能です!ソウルにいる方で、興味のある方はDMで連絡ください🐥 第1回目はソデムン刑務所、第2回目は植民地歴史博物館を予定しています♫ #日韓カップル #韓国留学 #留学 #韓国語

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植民地の記憶の場所に日韓学生が足を運んで、思ったことを共有するという活動を行っています。実際にその場所に行くという体験作りを優先しているので、日韓の歴史に知識がない方も大歓迎です。カカオトーク(韓国版LINE)で随時募集を行っています。

 

 

昨日は、みん会の初めての活動日でした。独立門駅に集合して、駅前にある独立門や独立館を見て回り、その後ボランティアの方の日本語の説明を聞きながら、ソデムン刑務所をみんなで見学しました。ソデムン刑務所は、大日本帝国による植民地時代に民族独立運動などを行なった人々を収容した施設です。

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ソデムン刑務所

 

見学後に近くの事務所に移動して感想を共有しました。みんなの口から出てくる一つ一つの言葉に重みがありました。聞いてて感動し、これはたくさんの人にも読まれるべきだと思い、活動報告を兼ねて昨日の議事録をそのまま載せようと思います。

 

日本人主催者Aさん(私)

 では、これから感想共有を始めたいと思います(笑)私が一番印象に残っているのは、受刑囚の方の名前と生年月日と写真が壁一面に貼ってあった部屋です。そこでは一人一人の顔が見ることができて。「こういう人がいました」ってまとめられると「そういう人がいたんだんだな」で終わるんですけど、そこで一人一人の顔を見ることで、そういう人たちが本当に実在したっていう実感が湧いてきてきました。

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受刑表

日本人Bさん

 今日の展示を見て、こんなに日本がひどいことをしたのに、かかわり合う時に昔のことを持ち出さないで交流することができてる今の環境をありがたいと思いました。今まで韓国に住んでて、ちょっと歩くのが大変そうなおじいさんおばあさんを見た時に、日本の影響があったのかなって(想像して)思っていたので……。そういう(植民地の歴史を見られる)場所に行けてよかったです。

 

韓国人Cさん(ボランティアでガイドをしてくださった方)

 実は、昨日説明を準備しながら本当にいろいろ考えました。日本人に対しての説明は私も初めてだったので、「これはどう説明すればいい?」「これは話してもいいのか?」と悩みました。あそこ(ソデムン刑務所)には、植民地の歴史もありますが、そのあとの独裁政権(の歴史)もあります。独裁政権のことを考えながら、複雑な思いで準備をしました。でも、私も日本にいるときにたくさんあちこち回ったので、私が、「隠す」とまではいかないですが、言わずにいることもおかしいですよね。例えば(今日見た)独立門とかは韓国人にも(独立門が)日本からの独立(を意味している)と思い込んでいる人もたくさんいます。歴史を正して、これからも立て直すことが大事だと今日改めて感じました。それと最後に、私が初めて日本人とソデムン刑務所に行って思ったことなんですが。私は今、日本と韓国の関係が複雑だと思っています。昔、約10年間の間、李明博朴槿恵の時代は親日派だったので、私の感覚では良くない時代だったと感じています。今でも、過去の清算、過去の問題をきちんと解決して、東アジアの平和に向かっていかなければならないと今日一日思っていました。

 

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独立門の前で記念撮影

 韓国人Dさん

 ユ・グワンスンという映画が公開されていて、3月1日に見にいきました。その映画はソデムン刑務所を背景に作られた映画です。映画で出てきた運動場とか、拷問の現場とか、実際に見ることができて本当に印象に残りました。見て回りながら、今の僕たちがこうやって平和に生きているのも、その人たちがいてくれたおかげだと思いました。特に僕は今、日本語を専攻しています。もし僕がその時代に生まれて、日本語を専攻しますって言ったらどれだけ白い目で見られるでしょうか。僕が今日本語を学んで、こういうことができるのは、あの時、実際の人たちが自由な世界に向けて頑張ってくれたおかげだと思いながら(展示を)見て回りました。あと、歴史を展示している建物に入って感じたんですが。去年、植民地時代に関連する韓国の近現代史を受験生の時に学びました。これは絶対忘れないようにしようと(その時は)思っていたのに、改めて(展示を)見ると、忘れてたことも多くて。どの団体に誰が所属していたかも忘れてて。「ああ、また勉強しなおさなきゃな」と思いました。大事な歴史なのに忘れていたことに恥ずかしさを感じました。

 

韓国人Eさん

 ソデムン刑務所に行ったのは5回目で、日本の方とソデムン刑務所に訪れたのは、2回目でした。植民地や近代史を語る展示は日本人を叱るような一方的な形態になっていて、今日も日本の方々に「無理やり見たくもないものを見せてるんじゃないか」という不安もありました。でも、意外に真面目に真剣に見てくださって感動しました。僕が知っているいろんなことを日本の方々に教えてあげることもすごく大切な体験だなと思いました。この頃、徴用工とか慰安婦の問題とかあって日韓関係が悪いんですけど、こういう風に韓国の植民地問題、その傷に興味をもってくれる方々がいらっしゃるのなら、一瞬で変わるのは無理だろうけれども、どんどん(いい方向に)変わっていくんじゃないかなって希望を持つようになりました。以上です。

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拷問器具の展示

日本人Fさん

 私は、専攻が全然韓国とか関係なくて工学なんですが、単純に興味があって参加しました。ちょうど一年前に日本の外務省の委託でやってる日韓近現代史訪韓団というのでAさんと知り合ったんですけど。その訪韓団では韓国に来て、日本が占領した時の歴史とかを実際に見ていくというものだったんですが、今日も訪韓団みたいで懐かしかったです。それと、新しい感じで良かったです。教科書で学ぶこともいいけれど、実際に来た方が印象に残るし、こうやって韓国人のひとたちと一緒に行く機会もそんなに無いと思うので、今日は日本語の解説までつけていただいで、一緒に回れて、新しいことを知れて良かったと思います。あと、私も正直、独立門をバスから見たことはあったんですけど、独立門って聞いたら、日本からの独立かなって勘違いしてたので、清からの独立っていう間違った知識を直せて良かったと思います。

 

日本人Gさん

 僕は一応、大学で朝鮮研究コースというところで韓国について研究しています。実際、韓国の人と会う度に、例えば授業の中で日本の話とか出てくると、なんか申し訳なさとかを感じてしまってつらいというか。自分は別に戦争とは遠い世代じゃないですか。その申し訳無さとモヤモヤでこう、微妙な、気持ちの整理がつかなかったんです。それで、実際に戦時中に何してたのか気になって、今回参加してみました。なんか、アウシュビッツのことは学校で習ってて、ドイツがこういうことしてたとかは知ってたんですけど、日本が実際に拷問とかをしてたことを全然知らなくて。実際今日行ってみたら、やっぱり日本も、戦争だとどこでもあると思うんですけど、拷問してたっていう事実を知れて良かったと思います。(日韓の)問題って難しいと思うんですけど、どうやって対処していけばいいのかをこれから考えていこうと思いました。

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ボランティアの方の説明を聞く様子

 日本人Hさん

 植民地時代の話とか過去の帝国主義がやったことについて、現代の日本人は歴史を学ぶ必要があるとよく言われると思います。僕もここを重く受け止めていて、もうちょっとそれを「歴史を正しく学ぶっていうことは結局どういうことなんだろうか」と私なりに考えてみました。おそらく当時、朝鮮半島には何千万人という人々がいて、日本にも何千万という人たちがいたんだろうと思います。例えば一千万人いたとしたら一千万通りのそれぞれ違うその人の体験というものがあったと思うんですよ。そしてその中には記録が残ってない人もたくさんいる。「歴史を正しく学ぶ」ことを考える上で大切なのは、少なくとも記録が残っている人だとか、残った体験がどうだったかだとか、記録がのこっている体験から記録が残っていない人たちにもこういう体験があったんじゃないかとか、想像力を働かせることだと思うんですよね。記憶をそのまま残していく、残された記憶にちゃんと真摯に向き合うっていうのが、歴史を学ぶ上で非常に重要な態度なんじゃないかなって僕は思うんですよ。

 そして、今回の刑務所に行った体験が自分の中でどういう意味を持ってくるかって考えてみます。日本が植民地を始めて、その中で朝鮮半島で独立主義とか愛国主義とかが燃え上がっていって、「日本の支配から脱して自分たちの国を持つのが夢なんだ、目標なんだ」と考える人たちが出てきた。出てきた時に、日本が植民地の宗主国として「それはダメだよ」と、暴動を起こしている人は捕まえたりして、多分拷問したりしたんだと。この、「拷問した日本人がいた」ということと「拷問された朝鮮半島の人がいた」っていうことをちゃんと覚えておくっていうことが、歴史と向き合うことで大事かなと思いました。

 もちろん、刑務所の中で出てきたように、朝鮮半島の中でも日本の支配に協力した親日派と呼ばれる人がいたりして、もっとすごい複雑だと思うんですよね。その複雑なものを、ものすごく膨大な量になるんだけれども、一つ一つ正確に、できるだけ正確に記憶していくことが歴史と真摯に向き合う姿勢なのかなって思いました。

 さっき、日本に対して上から目線の展示が多いのをどうかと思うというEさんの話は、それはそれである程度仕方がないのかなと思うんです。そういうことをされたという面で日本側があんまり気づいてないなと思ったら、そういう(一方的な)態度になりがちなところもあると思うんです。その問題を考える時に、僕が重要だなと思っているのが、お互いの国がどういう状態なのかをちゃんと自分の目で確かめることだと思います。ニュースとかだったら、例えば韓国はすごい反日運動が盛んで、なんか日本のことだったら、植民地のことだったら、一切許さない!っていう人たちがいっぱいいるのかなって思ってしまいがちなんですけど。でも、実際そうじゃなくて。僕の体験からすると、3・1の100年運動のときに、私日本人だから韓国人から怒られたかっていうと別にそんなことはなかった。タクシーの運転手も普通に乗せてくれた。これが真の姿だと思うんです。そんなもんなんだよってちゃんと伝えることも大事だなと思います。今日、この韓国の方々が親切に案内してくれて私もすごく嬉しかったし、「日本人が見てくれて感激した」っておっしゃってくれたけれども、私も韓国の人が我々に対して責めるでもなく、ちゃんと真摯に教えてくれたっていうのはすごい嬉しかったです。

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ソデムン刑務所内の広場

韓国人Iさん

 私は、日本の方がこんなソデムン刑務所、植民地時代に関連する場所に来るのがとても不思議でした。どんな考えで来たのかも気になるし、(日本人に対して)どんな話を聞かせるのかも気になって(今日この集まりに)来ました。私も高校生のときは、歴史の先生になりたいと思っていた時期もありました。その時、勉強した独立門とか刑務所とか、(名前の)由来とかを忘れていました。それをまた今日思い出せてとてもうれしいし、いろんなことが勉強になりました。

 

韓国人Jさん

 まず、来る前に「僕たちが刑務所に一緒に行けるだろうか」「一緒に話せるだろうか」と心配していました。でも、こんな風に多様な意見を共有することができて、それが本当に幸せで。特に歴史の部分に関しては大多数の韓国人の人たちが持っている日本人に対するイメージがあって、そういう人たちが絶対多いだろうなと思っていました。でも、こういう集まりがあるというのを知って、実際に来て、本当に一生懸命(日本人の人たちが展示を)見ている姿を見て、本当に感動しました。ありがとうございました。

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終始穏やかな雰囲気で。

在日韓国人Kさん

 私は、在日韓国人なんですけど。そもそもなんでこういう歴史に興味を持ったかっていうと、やっぱり自分の「在日であることはなぜか」っていう疑問から始まっていて。今日皆さんと一緒にソデムン刑務所に行こうと思ったのは、自分は韓国語ができないのでCさんの説明を聞きながら一つ一つ理解を深めたいと思ったからです。

 それと、日本の人と韓国人の人と一緒に行って、それぞれどういう考えを持って歴史を見るのかとか、過去にあったことをどういう風に感じたのかをすごい知りたかったからです。参加する前は「やっぱり偏見はあるのかな」とか「嫌な気持ちになるかな」とたくさんの人が思っていたという話を聞いて、私も(参加する前は)そう思っていました。日本人側として「胸が痛い」とか「ほんとかな?」って思う人がいるのかな?とか、韓国の人から日本の人を見たら「受け入れてもらえるだろうか」とか「怖がらないでもらえるだろうか」とか思うのかなって。私も気になっていました。でも、実際こうやって意見交換してみたら違ってて。先ほどもおっしゃってたんですけど、実際に自分の目で確かめることが大事だなって今日思いましたね。

 あと、今日は植民地時代についてたくさん話を聞いたんですけど、ソデムン刑務所は独裁政権時代もいろいろ関連してるってCさんが話してるのを聞いて、今日知ったことを一つとして、これからもっといろいろな勉強をしていかなきゃならないなぁ、大変だけど、義務じゃないけど、一つ一つ自分が理解することで、人にも教えることができるようになれればいいなって思いました。

 

 

 歴史の片鱗に触れてGさんのように”つらい”と感じてしまったり、Bさんのように言葉に詰まったりしてしまう経験は、多分ソウルに住んでいる日本人は少なからず一回は経験しているのではと思います。私も日本人としてソウルで生活する中で、日韓に横たわる暗い”歴史のせい”で何度も気まずい思いやふと涙を流してしまったことがあります。でも、それを単に”歴史のせい”で終わらせてはダメだろうなと日々思っていました。

 留学も折り返し地点に来て、現地の生活にも慣れた中で、そんな日本人ならではの悩みを共有したり、そこに韓国の人が寄り添ってくれたりするコミュニティがあればいいなと思い、「みん会」を作りました。記憶の場所に足を運んで、少しずつ歴史を勉強したり、韓国の人と直接話をしたりして、お互いの疑問や”つらさ”が少しでも消化されて、共に前向きな思いへと変えることができればなと思っています。